データを変換するって?
なぜデータ変換が必要か?
DTP、CAD、CG等のデジタルツールには、さまざまなアプリケーション(ソフトウェア)が存在します。これらアプリケーションを通して、2Dのイラストや3Dモデルなどのデジタルデータを作成しますが、作成したデータを再びそのアプリケーションで閲覧・編集したり、他人と共有するには、一度何かしらの形で保存しなければなりません。
保存する際のファイルの形式(規格・フォーマット)は、そのアプリケーションでしか開けない専用ファイルから、複数のアプリケーションで汎用的に扱えるもの(中間ファイルフォーマット)、コンピュータにしか判別できないような形式(バイナリ形式:Binary format)、人間でも解読可能なようなテキストで書かれた形式(アスキー形式:ASCII format)など、種類は多岐にわたります。
あるアプリケーションで作成されたデータを、互換性のない別のアプリケーションで開くには、そのアプリケーションで処理できる形式に書き換えておく必要があります。ここでは、この一連の作業や処理を、「データ変換(Data conversion)」 と呼びます。
データ変換の方法には、アプリケーション内で変換する方法や専用のデータ変換ソフトを利用する方法などがあります。ただし例えば、音声データを画像データには変換できないように、すべてのファイルが変換可能な訳ではないことには注意が必要です。
専用のファイルフォーマット
デジタルツールのアプリケーションには、さまざまな種類があると言いましたが、その多くはそのアプリケーションでしか読み書きができない専用のファイル形式を持ちます。専用ファイル形式には、そのアプリケーションの作り手の意図を反映しやすかったり、そのアプリケーションの処理に最適化した形で入出力・保存ができるなどのメリットがあります。
例えば、普段日本語を話す人がいた時、話し相手も日本語が理解できれば、言葉を翻訳せずにそのまま会話できますし、日本語で伝えた方が、考えや意図が早く正確に伝わりやすい、というような場面もありますよね。それらと同様にCADなどのデジタルツールでも、そのCADでの専用ファイル形式を使うことで、2Dや3D形状をデータの欠損なく、同じCAD内での受け渡しができます。
ただし当然ですが、そのアプリケーション専用のファイル形式であるため、他のアプリケーションとの互換性がない場合は、他のアプリケーションでは読込や編集ができないというデメリットがあります。特定の分野でよく利用されるソフト同士であれば、複数のアプリケーションのファイル形式を互いにサポートしている場合も多くありますが、サポートしていない場合は、事前にデータ変換の処理が必要になります。
専用のファイル形式は、そのアプリケーションの開発メーカーによって作られる場合がほとんどです。同じメーカーの専用ファイルでも、バージョンや年代の違いによって、曲線が直線で表されるなど、完全に再現できない場合もあります。この場合も、可能であれば、データ変換が必要になります。
主な2Dデータの専用ファイルフォーマットの例
グラフィックソフト
・Photoshop【.psd】:アドビシステムズ社、主に画像・ラスターデータ形式
・Illustrator【.ai 】:アドビシステムズ社、主に曲線・ベクターデータ形式
2DCADソフト
・JWCAD【.jwc】【.jww】:2次元汎用CAD
・AutoCAD【.dwg 】:DWG (Autodesk社AutoCADの標準ファイル形式)
・AutoCAD【.dxf】【DXF】:(Autodesk社AutoCADの異なるバージョン間のデータ互換形式)
※DWG・DXFのように、普及率の高さから、事実上、次項で解説する中間ファイルのように扱われるものも少なくありません。
中間ファイルフォーマットとは?
中間ファイル(フォーマット)とは、特定のシステムに依存しないファイル形式のことで、あらゆるアプリケーション間でのデータの交換を目的として標準化・規格化されています。
先ほどと同様、日常言語で例えると、日本語を話す人とロシア語を話す人がいた時に互いの言語を理解できない場合でも、それぞれが理解できる 「英語」 に一度翻訳して、「日本語 ⇔ 英語 ⇔ ロシア語」 でやり取りをすれば、ある程度のコミュニケーションが可能になります。この例での 「英語」 が、データ変換における 「中間ファイル」 にあたります。
このように、異なるデジタルツール間でデータを受け渡しする際に、専用ファイル形式だとやり取りができない場合でも、一旦、中間ファイルに書き出し(エクスポート)して、別のデジタルツールで読み込み(インポート)することでデータのやり取りが可能になります。ただし言語の場合に、英語を間に挟むことでニュアンスのズレが発生しやすいのと同様で、中間ファイルを介すると、専用ファイル同士でやり取りする場合に比べ、データ上の欠損が起こりやすくなるというデメリットがあります。
中間ファイルは、各業界・産業の標準化を推進するための標準化団体によってや、ISOなどの国際規格として開発されることが多いですが、前項で述べた通り、もとは専用だったがソフトの普及に従って、事実上、中間ファイルのように扱われるようになっているものも少なくありません。
主な2Dデータの中間ファイルフォーマットの例
画像・ラスターデータ
JPEG【.jpg】:Joint Photographic Experts Group、静止画像の圧縮形式
PNG【.png】:Portable Network Graphics、圧縮による画質の劣化のない可逆圧縮の画像形式
BMP【.bmp】:Bitmap Image、マイクロソフトとIBMにより作られた画像形式
曲線・ベクターデータ
SVG 【.svg】:Scalable Vector Graphics、2次元ベクターイメージ用の画像形式
主な3Dデータの中間ファイルフォーマットの例
3DCADソフト
STEP【.stp】:ISOによる工業製品データ交換のための国際規格
IGES【.igs】:自動車産業を中心とするCAD間のデータ交換用の中間ファイルフォーマット
IFC【.ifc】:buildingSMARTによる建築・建設業界向けのBIMやCADのデータ仕様
データ変換の方法
データ変換の方法はいくつかありますが、主な方法としては、下記になります。
①データ変換専用のソフトやサービスを用いる方法
②アプリケーション内で変換する方法
③いくつかのアプリケーションを組み合わせる方法
①には、無償のものから有償のものまでさまざまな手段があります。汎用的な画像形式などは、Web上で完結する無料の変換ツールも最近はたくさんあります。専用ファイル形式同士の変換ツールとしては、例えば、CADデータであれば下記のようなものがあります。
◆CrossManager :専用ソフト不要、異なるCADシステムのデータをダイレクトに変換。
1つのアプリケーションでいくつもの拡張子の読込・書出に対応している場合は、②のような方法も可能です。
②のように一発で目的のファイル形式に変換できない場合でも、いくつかのアプリケーションを介することで可能な場合もあります。ただし、経由するアプリケーションが多くなるほどデータ欠損の可能性も高まりますのでおすすめはできません。